2015.12.4
By さわらびY(ゆみ

76-2  番外編 多摩の翡翠大珠を実見

T 多摩の東京都埋蔵文化財センターを訪ねて

 2015年8月26日、、馬場小室山遺跡研究会の4名の有志で、朝からはるばる多摩の東京都埋蔵文化財センターをお訪ねし、縄文中期のヒスイ製ほか装身具を中心にした石製品を熟覧、数時間かかってじっくり観察し、縄文人の技やその用途など検討しました。

 

多摩ニュータウンNo.72・795・796遺跡出土の石器





多摩ニュータウンNo.72遺跡出土のヒスイ製大珠


左から、   緒締形    鰹節形    緒締形    多孔形

左から2番目の鰹節形は324住から、右端の多孔形は328住から、
共に北東部分の主柱穴脇の床面から出土した(↓図)
多摩ニュータウンNo.72遺跡324号住の大珠 (鰹節形、117o、共伴は勝坂3)
表面は研磨されていませんが、中央の穴は両面ともきれいに仕上げられています。
多摩ニュータウンNo.72遺跡328号住の大珠  (多孔形、94o、共伴は勝坂3)
二方向から穿孔し、表面はきれいに研磨されています。出口側?の穴の口は仕上げが未調整のようですが・・



多摩ニュータウンNo.72遺跡出土の緒締形のヒスイ製品(左)と 軽石製品(右)の穿孔の仕方
  
 穿孔の形いろいろ
      
左:漏斗状で奥に細くなっている              右:ほぼまっすぐな穴


両面から穿孔した穴が、少々ずれたようです。

多摩ニュータウン(No.9遺跡など)出土のヒスイ原石と未製品




 これほどたくさんの硬玉製の大珠や、さまざまな石材や形の石製品を見ることができたのは、今回初めてで、総括した感想を述べるのは困難ですが、次のような点が印象に残りました。

1. きれいに成形された鰹節形ヒスイ製品は意外に数少なく、緒締形(長軸方向に穿孔)の拳のようなボリュームある形の製品もあって、装身具というより穿孔された石器というイメージ。

2. 長軸方向に穿孔した緒締形が多い。
 二方向の多孔形もあり、穿孔技術の極限に挑んでいるだろうか。
 (緒締形の場合、石笛として吹くこともできるが・・・)

3. 穿孔の仕方も多様で、穴口の仕上げも一律ではない。

4. ヒスイ製に並んで、同様な加工を施した軽石製品が共伴している。
 この地域ではヒスイ以上に珍しい石材ということで、珍重されたのだろうか。

5. 最大規模の鰹節形と多孔形ヒスイ製品は、それぞれ2軒の住居の主柱に括り付けられていたよう。
 土坑からの出土ではないので、個人に伝世するのではなく、家の道具として珍重され、住居の廃絶と共に廃棄されるような存在だったのではないか?

6. ヒスイの原石や未製品も多くみられ、産地で製品化されずに、石材のまま流通し、消費地で加工されていた可能性がある。
 おそらく、このような貴石を極限の技で加工すること自体が、縄文中期の生活上、有意義な行為であり、縄文人の精神、そして生き方だったのであろう。


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